「空き家等対策の推進に関する特別措置法」No.47
第10条 市町村長は、固定資産税の課税その他の事務のために利用する目的で保有する情報であって氏名その他の空き家等の所有者等に関するものについては、この法律の施行のために必要な限度において、その保有に当たって特定された利用の目的以外の目的のために内部で利用することができる。
2 都知事は、固定資産税の課税その他の事務で市町村が処理するものとされているもののうち特別区の存する区域においては都が処理するものとされているもののために利用する目的で都が保有する情報であって、特別区の区域内にある空き家等の所有者等に関するものについて、当該特別区の区長から提供を求められたときは、この法律の施行のために必要な限度において、速やかに当該情報の提供を行うものとする。
3 前項に定めるもののほか、市町村長はこの法律の施行のために必要があるときは、関係する地方公共団体の長その他のものに対して、空き家等の所有者等の把握に関し必要な情報の提供を求めることができる。
Q47: 第10条の趣旨は何か。
A47:1 本条は、空き家等の所有者等を把握するため、空き家等の所有者等の特定に必要な情報について、①固定資産課税台帳に記載された情報など目的外利用が制限されている一定の情報について、空き家等の所有者等に関するものであればこの法律の施行に必要な限度で、市町村で内部利用ができるようにするとともに、②市町村長が関係する国、地方公共団体、ガス・電気などの事業者などに情報提供を求めることができるようにした規定である。
2 各市町村が空き家等対策を効果的に行うためには、空き家等の所有者等の情報を把握することが不可欠であり、そのためには、第9条第1項に基づき、当該空き家等の不動産登記簿情報、住民票情報、戸籍情報等の行政が保有している情報を可能な限り利用することに加え、必要に応じて近隣住民や関係者への聞き取り調査等を行うなどして、空き家等の所有者等を把握することとなる。
しかし、これらの調査方法では所有者等の把握に不十分な場合がある。例えば、不動産登記簿情報では、空き家等の所有権が移転したにも関わらず移転登記が長期間なされず、権利関係の実体が反映されていない場合もあり、そのような場合には、現在の空き家等の所有者等の把握が最終的にできないことも多い。
3 この点、固定資産税の課税のために利用する目的で保有する空き家等の所有者に関する情報には、不動産登記簿情報に加え税務部局独自の調査等により不動産登記簿上の情報には記載されていない所有者等の氏名、住所等の情報が存在することもある。しかしこのような個人情報はこれまで地方税法第22条により目的外利用が禁止されており、空き家等対策に利用することができなかった。
また、個人情報保護法等関係法令により提供が必ずしも禁止されていなくても、空き家等の所有者等に関する情報は個人情報であることから、かかる情報の提供については、行政機関や事業者によっては、明確な権限規定がない限り提供することに消極的になることもあることから、かかる情報提供の根拠規定を置くことが適当である。
4 そこで、本条では、第1項及び第2項において、固定資産税の課税等の事務のために利用する目的で保有する空き家等の所有者等の氏名等の情報を、この法律の施行のために必要な限度において内部利用ができる(特別区の区域内にある空き家等の所有者等に関するものについては、都知事は特別区の区長に情報提供することができる)と定めるとともに、第3項では、市町村長はこの法律の施行のために必要があるときは、関係する地方公共団体や国の行政機関の長、さらには電気・ガス等の供給事業者等に対して、空き家等の所有者等の把握に関し必要な情報の提供を求めることができることとしたのである。
本条により、市町村がより空き家等の所有者等の情報を把握しやすくなり、より効果的に空き家等対策を行うことができると考えられる。