「空き家等対策の推進に関する特別措置法」No.58

第14条 市町村長は、特定空き家等の所有者等に対し、当該特定空き家等に関し、除却、修繕、立木竹の伐採その他周辺の生活環境の保全を図るために必要な措置(そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態又は著しく衛生上有害となるおそれのある状態にない特定空き家等については、建築物の除却を除く。次項において同じ。)をとるよう助言又は指導をすることができる。

2 市町村長は、前項の規定による助言又は指導をした場合において、なお当該特定空き家等の状態が改善されないと認めるときは、当該助言又は指導を受けた者に対し、相当の猶予期限を付けて、除却、修繕、立木竹の伐採その他周辺の生活環境の保全を図るために必要な措置をとることを勧告することができる。

3 市町村長は、前項の規定による勧告を受けた者が正当な理由がなくてその勧告に係る措置をとらなかった場合において、特に必要があると認めるときは、その者に対し、相当の猶予期限を付けて、その勧告に係る措置をとることを命ずることができる。

4 市町村長は、前項の措置を命じようとする場合においては、あらかじめ、その措置を命じようとする者に対し、その命じようとする措置及びその事由並びに意見書の提出先及び提出期限を記載した通知書を交付して、その措置を命じようとする者又はその代理人に意見書及び自己に有利な証拠を提出する機会を与えなければならない。

5 前項の通知書の交付を受けた者は、その交付を受けた日から5日以内に、市町村長に対し、意見書の提出に代えて公開による意見の聴取を行うことを請求することができる。

6 市町村長は、前項の規定による意見の聴取の請求があった場合においては、第3項の措置を命じようとする者又はその代理人の出頭を求めて、公開による意見の聴取を行わなければならない。

7 市町村長は、前項の規定による意見の聴取を行う場合においては、第3項の規定によって命じようとする措置並びに意見の聴取の期日及び場所を、期日の3日前までに、前項に規定する者に通知するとともに、これを公告しなければならない。

8 第6項に規定する者は、意見の聴取に際して、証人を出席させ、かつ、自己に有利な証拠を提出することができる。

9 市町村長は、第3項の規定により必要な措置を命じた場合において、その措置を命ぜられた者がその措置を履行しないとき、履行しても十分でないとき又は履行しても同項の期限までに完了する見込みがないときは、行政代執行法(昭和23年法律第43号)の定めるところに従い、自ら義務者のなすべき行為をし、又は第三者をしてこれをさせることができる。

10 第3項の規定により必要な措置を命じようとする場合において、過失がなくてその措置を命ぜられるべき者を確知することができないとき(過失がなくて第1項の助言若しくは指導又は第2項の勧告が行われるべき者を確知することができないため第3項に定める手続により命令を行うことができないときを含む。)は、市町村長は、その者の負担において、その措置を自ら行い、又はその命じた者若しくは委任した者に行わせることができる。この場合においては、相当の期限を定めて、その措置を行うべき旨及びその期限までにその措置を行わないときは、市町村長又はその命じた者若しくは委任した者がその措置を行うべき旨をあらかじめ公告しなければならない。

11 市町村長は、第3項の規定による命令をした場合においては、標識の設置その他国土交通省令・総務省令で定める方法により、その旨を公示しなければならない。

12 前項の標識は、第3項の規定による命令に係る特定空き家等に設置することができる。この場合においては、当該特定空き家等の所有者等は、当該標識の設置を拒み、又は妨げてはならない。

13 第3項の規定による命令については、行政手続法(平成5年法律第88号)第三章(第12条及び第14条を除く。)の規定は、適用しない。

14 国土交通大臣及び総務大臣は、特定空き家等に対する措置に関し、その適切な実施を図るために必要な指針を定めることができる。

15 前各項に定めるもののほか、特定空き家等に対する措置に関し必要な事項は、国土交通省令・総務省令で定める。

Q58:第14条の趣旨は何か

A58:1 法第2条第2項に規定する「特定空き家等」に該当する建築物等は、適切な管理が行われていない結果として、地域住民の生活環境に深刻な影響を及ぼしているものであり、市町村長は、地域住民の生命、身体又は財産を保護するとともに、その生活環境の保全を図るために必要な措置を早急に講ずることが望ましい。

 そこで、本条では、行政が周辺の生活環境の保全を図るために何らかの措置を講ずる必要のある、「特定空き家等」に対し、直接かつ包括的に対処することが可能となるよう、市町村長が「特定空き家等」の所有者に対して除却、修繕、立木竹の伐採等の措置に係る助言・指導、勧告又は命令ができることとし、加えて、当該所有者等が当該命令を履行しない場合や、所有者等を確知できない場合等であっても、要件が明確化された行政代執行の方法により強制執行が可能となることを定めた。

2「特定空き家等」に該当する建築物等については、市町村長は、建築物等の詳細な現状を把握し、周辺の生活環境の保全を図るためにどのような措置が必要となるかについて迅速に検討するため、法第9条及び第10条に基づく調査をすることができる。

そして、この調査結果等に基づき、市町村長は、「特定空き家等」の所有者等に対し、必要な措置を助言・指導、勧告又は命令することができる(法第14条第1項から第3項まで)

3「特定空き家等」の所有者等が、助言・指導又は勧告に従わず、さらに必要な措置について命令まで出されたにもかかわらず、その措置を履行しないとき、履行しても十分でないとき又は履行しても期限までに完了する見込みがないときは、行政代執行法の定めるところに従い、市町村長は本来「特定空き家等」の所有者等が履行すべき措置を代執行することができる(同条第9項)

4 この他、法第14条は、「特定空き家等」の所有者等に対し市町村長が必要な措置を命ずる際に講ずるべき手続き、過失がなくて「特定空き家等」の所有者等を市町村長が確知することができない場合における代執行に関する規定(第条第10項)等を定めている。

5 なお、法第14条に基づく措置は、いずれも「特定空き家等」の所有者等にとっては強い公権力の行使を伴う行為を含むものである。

このため、国土交通大臣及び総務大臣は、どのような空き家等が「特定空き家等」に該当するか否かを判断する際に参考となる基準や市町村長が「特定空き家等」の所有者等に対して必要な措置を助言又は指導する段階から最終的には代執行を行うに至る段階までの具体的な手続き等について記載したガイドラインを、法第14条第14項に基づき定め

ることとしている。

各市町村長は、必要に応じてこのガイドラインを参考にしつつ、各地域の実情に応じた「特定空き家等」に関する対策に取り組むことになる。

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