「空き家等対策の推進に関する特別措置法」No.39
第9条 市町村長は、当該市町村の区域内にある空き家等の所在及び当該空き家等の所有者等を把握するための調査、その他空き家等に関しこの法律の施行のために必要な調査を行うことができる。
2 市町村長は、第14条第一項から第三項までの規定の施行に必要な限度において、当該職員又はその委任したものに、空き家等と認められる場所に立ち入って調査させることができる。
3 市町村長は、前項の規定により当該職員又はその委任したものを、空き家と認められる場所に立ち入らせようとするときは、その5日前までに、当該空き家等の所有者等にその旨を通知しなければならない。ただし、当該所有者等に対し通知することが困難であるときはこの限りではない。
4 第二項の規定により空き家等と認められる場所に立ち入ろうとするものは、その身分を示す証明書を携帯し、関係者の請求があったときは、これを掲示しなければならない。
5 第二項の規定による立ち入り調査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。
Q39:本項が、空き家等、それも建築物等の内部にまで立ち入って調査することができるというのは、憲法上問題はないか。
A39:1 行政法規における立入りの権限は、行政上の目的のための範囲内でのみ認められるものであるが、このような行政機関の職員の立入りを受忍しなければならないことは、公益上必要がある場合に限り、かつ、その程度は、公益上必要な最小限度においてのみ認められるものである。
2 本項が認める立入調査は立入調査以外の任意の調査により、外観上、周辺の生活環境に悪影響を及ぼす特定空き家等と認められる「空き家等」について、法第14条第1項から第3項までの規定に基づき特定空き家等に対する措置を行う必要があるかどうか、あるとすればどのような内容の措置を行うか等を判断するために行われるものであり、公益上の必要性から行われるものである。
3 また、特定空き家等に該当するか否かや、当該特定空き家等に対する適正な是正措置を判断するにあたっては、建築物等の外観のみならず、内部構造や朽廃の状況等、空き家やその敷地内の状況を前もって詳しく調査することが不可欠であり、立入調査以外の手段では、その目的は達成することが一般的に困難である。
4 他方、立入調査の対象となるのは、「居住その他の使用がなされていないことが常態である」空き家等のうち立入調査以外の調査によって周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態にある空き家等と認められるものであることから、市町村職員等が立ち入ってもプライバシーの侵害の程度は相対的に軽微といえる。さらに、本項の立入調査は、「第14条第1項から第3項までの規定の施行に必要な限度において」のみ認められるとされており、その程度・範囲も必要最小限度のものである。
5 以上述べたとおり、本項による立入調査には、公益上の必要性があり、手段としての程度も必要最小限度であるといえる。このような立法例は、建築基準法第12条第7項(保安上危険等の状況にある既存不適格の建築物への立入検査等)にも見られるところである。