「空き家等対策の推進に関する特別措置法」No.40
第9条 市町村長は、当該市町村の区域内にある空き家等の所在及び当該空き家等の所有者等を把握するための調査、その他空き家等に関しこの法律の施行のために必要な調査を行うことができる。
2 市町村長は、第14条第一項から第三項までの規定の施行に必要な限度において、当該職員又はその委任したものに、空き家等と認められる場所に立ち入って調査させることができる。
3 市町村長は、前項の規定により当該職員又はその委任したものを、空き家と認められる場所に立ち入らせようとするときは、その5日前までに、当該空き家等の所有者等にその旨を通知しなければならない。ただし、当該所有者等に対し通知することが困難であるときはこの限りではない。
4 第二項の規定により空き家等と認められる場所に立ち入ろうとするものは、その身分を示す証明書を携帯し、関係者の請求があったときは、これを掲示しなければならない。
5 第二項の規定による立ち入り調査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。
Q40:第2項に基づく立入調査は、所有者等の承諾がなくても行うことが可能か。仮に所有者等に立入調査を拒否された場合にどのような対応が可能か。
A40:1 第9条第2項の立入調査は、所有者等の承諾を要件とするものではないので(建築基準法第12条第7項ただし書、消防法第4条第1項ただし書参照)、所有者への通知手続き等の第3項以下の手続きに従う限り、あらかじめ所有者等の承諾を得ずに行ったとしても、法第14条第1項から第3項までに基づき特定空き家等に対する措置を行うために必要な限度において適法な職務執行となる。
もっとも本項の立入調査は、いわゆる間接強制捜査(調査拒否に対して罰則を設けて罰則の威嚇により間接的に調査受諾を強制するもの)であり、相手方が明示的な拒否をしている場合にこれを直接的物理的に排除するなどして立入調査を行う権限まで認めるものではない。
ただし、立入調査を拒否した相手方には過料(立入り調査を拒み、妨げ、又は忌避した者は、20万円以下の過料)が課せられる(法第16条第2項)。
2 この点に関し、本法は、適正手続の保証の観点から、市町村長は立入調査をする旨の通知をしなくてはならないこととしており(第3項)、これにより市町村長は個別具体的な立入調査に対する所有者等の意思を確認することになる。ただし、第3項の通知を行ったが応答がない場合や、所有者等の所在が不明で第3項の通知をすることが困難な場合には、所有者等の明示の拒否ないと考えても差し支えはなかろう。
なお、当該通知を行う以前から「関係者以外立入禁止」のような張り紙等が玄関・門等に貼ってあった場合には、それだけをもって「真の」所有者等による「個別具体的」な立入調査に対する明示の拒否がなされたものということはできないものと解される。
3 所有者等に立入調査を明示的に拒否された場合の実務の対応としては、まず、そのような場合においても、直接的強制力を用いずに口頭で説得を行うことは許させるから、仮に、立入調査の現場で所有者等が明示的な拒否を示したとしても、翻意を促すため、社会通念上相当と認められる範囲で敷地内にとどまることは許されると解する。
また、その場合に、立入調査を拒否した場合の罰則を告げるなどして説得に努めるとともに、罰則の執行に備えて拒否状況等を撮影・録音するなどして証拠保全するのが相当であろう。立入調査を拒否するにあたり、所有者等が暴行または脅迫を加えた場合には、公務執行妨害(刑法第95条)等の犯罪が成立しうると解される。
4 なお、立入調査が仮に所有者等の明示的な拒否により実施できなかったとしても、当該空き家等の外観や法第9条第1項の調査等により、特定空き家等と認められる場合には、第14条の定める要件に従い、指導・助言、勧告、命令、代執行などの手続きをとることができる事には留意されたい。