「空き家等対策の推進に関する特別措置法」No.69
第14条 市町村長は、特定空き家等の所有者等に対し、当該特定空き家等に関し、除却、修繕、立木竹の伐採その他周辺の生活環境の保全を図るために必要な措置(そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態又は著しく衛生上有害となるおそれのある状態にない特定空き家等については、建築物の除却を除く。次項において同じ。)をとるよう助言又は指導をすることができる。
2 市町村長は、前項の規定による助言又は指導をした場合において、なお当該特定空き家等の状態が改善されないと認めるときは、当該助言又は指導を受けた者に対し、相当の猶予期限を付けて、除却、修繕、立木竹の伐採その他周辺の生活環境の保全を図るために必要な措置をとることを勧告することができる。
3 市町村長は、前項の規定による勧告を受けた者が正当な理由がなくてその勧告に係る措置をとらなかった場合において、特に必要があると認めるときは、その者に対し、相当の猶予期限を付けて、その勧告に係る措置をとることを命ずることができる。
4 市町村長は、前項の措置を命じようとする場合においては、あらかじめ、その措置を命じようとする者に対し、その命じようとする措置及びその事由並びに意見書の提出先及び提出期限を記載した通知書を交付して、その措置を命じようとする者又はその代理人に意見書及び自己に有利な証拠を提出する機会を与えなければならない。
5 前項の通知書の交付を受けた者は、その交付を受けた日から5日以内に、市町村長に対し、意見書の提出に代えて公開による意見の聴取を行うことを請求することができる。
6 市町村長は、前項の規定による意見の聴取の請求があった場合においては、第3項の措置を命じようとする者又はその代理人の出頭を求めて、公開による意見の聴取を行わなければならない。
7 市町村長は、前項の規定による意見の聴取を行う場合においては、第3項の規定によって命じようとする措置並びに意見の聴取の期日及び場所を、期日の3日前までに、前項に規定する者に通知するとともに、これを公告しなければならない。
8 第6項に規定する者は、意見の聴取に際して、証人を出席させ、かつ、自己に有利な証拠を提出することができる。
9 市町村長は、第3項の規定により必要な措置を命じた場合において、その措置を命ぜられた者がその措置を履行しないとき、履行しても十分でないとき又は履行しても同項の期限までに完了する見込みがないときは、行政代執行法(昭和23年法律第43号)の定めるところに従い、自ら義務者のなすべき行為をし、又は第三者をしてこれをさせることができる。
10 第3項の規定により必要な措置を命じようとする場合において、過失がなくてその措置を命ぜられるべき者を確知することができないとき(過失がなくて第1項の助言若しくは指導又は第2項の勧告が行われるべき者を確知することができないため第3項に定める手続により命令を行うことができないときを含む。)は、市町村長は、その者の負担において、その措置を自ら行い、又はその命じた者若しくは委任した者に行わせることができる。この場合においては、相当の期限を定めて、その措置を行うべき旨及びその期限までにその措置を行わないときは、市町村長又はその命じた者若しくは委任した者がその措置を行うべき旨をあらかじめ公告しなければならない。
11 市町村長は、第3項の規定による命令をした場合においては、標識の設置その他国土交通省令・総務省令で定める方法により、その旨を公示しなければならない。
12 前項の標識は、第3項の規定による命令に係る特定空き家等に設置することができる。この場合においては、当該特定空き家等の所有者等は、当該標識の設置を拒み、又は妨げてはならない。
13 第3項の規定による命令については、行政手続法(平成5年法律第88号)第三章(第12条及び第14条を除く。)の規定は、適用しない。
14 国土交通大臣及び総務大臣は、特定空き家等に対する措置に関し、その適切な実施を図るために必要な指針を定めることができる。
15 前各項に定めるもののほか、特定空き家等に対する措置に関し必要な事項は、国土交通省令・総務省令で定める。
Q69:第3項に基づく命令を行うにあたって必要となる、第4項から第8項までの手続きの内容は何か。
A69:1法第14条第3項に基づく命令は、不利益処分の性質を持つ行政処分であり法第14条第4項から第8項までの規定は、命令をすることについて相手方に反論・防御の機会等の手続的保障を与えるために設けられたものである。
2 命令を行うにあたっては、市町村長は、あらかじめ、その措置を命じようとする者(すなわち「特定空き家等」の所有者等)に対し、その命じようとする措置及びその事由並びに意見書の提出先及び提出期限を記載した通知書を交付しなければならない(第4項)。また、この通知書の交付を受けた者は、その交付を受けた日から5日以内に、市町村長に対し、意見書の提出に代えて公開による意見の聴取を行うことを請求することができることとなる(第5項)
3 これにより、「特定空き家等」の所有者等は、市町村長とのやり取りを通じて、また関係者にもそれを公開することにより、法第14条第3項の命令の背景や経緯を明らかにし、自らの防御の機会を十全に確保することができる。なお、本項の期間内に意見聴取の請求がない場合は、本項の期間経過後ただちに本条第3項の命令をすることができる。一方、本項の期間内に意見聴取のあった場合においては、市町村長は、第3項に基づく命令の相手方又はその代理人の出頭を求めて、公開による意見の聴取を行わなければならず(第6項)、またそれらの者は、意見の聴取に際して、証人を出席させ、かつ、自己に有利な証拠を提出することができる(第8項)
4 このような手続的保障は、法第14条第3項に基づく命令が作為義務命令であるため、行政手続法によれば、聴聞又は弁明の機会を付与すべき処分とされているところ(同法第13条第1項第1号二及び第2号)、「特定空き家等」に対する措置の場合、その除却命令など所有者等の財産権に重大な不利益をもたらすものであるため、より手厚い手続的保障を付与する一方、その処分の性質上、早期に処分を行う必要性もあることから、それらを総合考慮して、行政手続法の特例手続きを定めることとしたものである(法第14条第13項参照)。なお、同様の手続的保障規定は、例えば建築基準法第9条第2項から第6項までに規定されている。 5 ただし、「特定空き家等」の所有者等は、当該「特定空き家等」の所在地から遠く離れたところに居住している場合が多いことも想定されるため、公開による意見聴取手続の請求期間(第5項)については、建築基準法の同種規定(「3日以内」。同法第9条第3項。)より2日間多い「5日以内」とし、同様に意見聴取期日等の通知期限(第7項)についても、建築基準法の同種規定(「2日前まで」。同法第9条第5項。)より1日間多い「3日前まで」としている。
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