「空き家等対策の推進に関する特別措置法」No.74

第14条 市町村長は、特定空き家等の所有者等に対し、当該特定空き家等に関し、除却、修繕、立木竹の伐採その他周辺の生活環境の保全を図るために必要な措置(そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態又は著しく衛生上有害となるおそれのある状態にない特定空き家等については、建築物の除却を除く。次項において同じ。)をとるよう助言又は指導をすることができる。

2 市町村長は、前項の規定による助言又は指導をした場合において、なお当該特定空き家等の状態が改善されないと認めるときは、当該助言又は指導を受けた者に対し、相当の猶予期限を付けて、除却、修繕、立木竹の伐採その他周辺の生活環境の保全を図るために必要な措置をとることを勧告することができる。

3 市町村長は、前項の規定による勧告を受けた者が正当な理由がなくてその勧告に係る措置をとらなかった場合において、特に必要があると認めるときは、その者に対し、相当の猶予期限を付けて、その勧告に係る措置をとることを命ずることができる。

4 市町村長は、前項の措置を命じようとする場合においては、あらかじめ、その措置を命じようとする者に対し、その命じようとする措置及びその事由並びに意見書の提出先及び提出期限を記載した通知書を交付して、その措置を命じようとする者又はその代理人に意見書及び自己に有利な証拠を提出する機会を与えなければならない。

5 前項の通知書の交付を受けた者は、その交付を受けた日から5日以内に、市町村長に対し、意見書の提出に代えて公開による意見の聴取を行うことを請求することができる。

6 市町村長は、前項の規定による意見の聴取の請求があった場合においては、第3項の措置を命じようとする者又はその代理人の出頭を求めて、公開による意見の聴取を行わなければならない。

7 市町村長は、前項の規定による意見の聴取を行う場合においては、第3項の規定によって命じようとする措置並びに意見の聴取の期日及び場所を、期日の3日前までに、前項に規定する者に通知するとともに、これを公告しなければならない。

8 第6項に規定する者は、意見の聴取に際して、証人を出席させ、かつ、自己に有利な証拠を提出することができる。

9 市町村長は、第3項の規定により必要な措置を命じた場合において、その措置を命ぜられた者がその措置を履行しないとき、履行しても十分でないとき又は履行しても同項の期限までに完了する見込みがないときは、行政代執行法(昭和23年法律第43号)の定めるところに従い、自ら義務者のなすべき行為をし、又は第三者をしてこれをさせることができる。

10 第3項の規定により必要な措置を命じようとする場合において、過失がなくてその措置を命ぜられるべき者を確知することができないとき(過失がなくて第1項の助言若しくは指導又は第2項の勧告が行われるべき者を確知することができないため第3項に定める手続により命令を行うことができないときを含む。)は、市町村長は、その者の負担において、その措置を自ら行い、又はその命じた者若しくは委任した者に行わせることができる。この場合においては、相当の期限を定めて、その措置を行うべき旨及びその期限までにその措置を行わないときは、市町村長又はその命じた者若しくは委任した者がその措置を行うべき旨をあらかじめ公告しなければならない。

11 市町村長は、第3項の規定による命令をした場合においては、標識の設置その他国土交通省令・総務省令で定める方法により、その旨を公示しなければならない。

12 前項の標識は、第3項の規定による命令に係る特定空き家等に設置することができる。この場合においては、当該特定空き家等の所有者等は、当該標識の設置を拒み、又は妨げてはならない。

13 第3項の規定による命令については、行政手続法(平成5年法律第88号)第三章(第12条及び第14条を除く。)の規定は、適用しない。

14 国土交通大臣及び総務大臣は、特定空き家等に対する措置に関し、その適切な実施を図るために必要な指針を定めることができる。

15 前各項に定めるもののほか、特定空き家等に対する措置に関し必要な事項は、国土交通省令・総務省令で定める。

Q74:第14条第9項又は10項に基づく代執行に係る費用はどのように徴収するか。

A74:1 法第14条第9項に定める代執行は、「行政代執行法の定めるところに従い」行われることから、その費用は、国税滞納処分の例によって「特定空き家等」の所有者等から徴収することとなる(行政代執行法第6条)。

すなわち、代執行の際に実際に要した費用の額及びその納期日を定めて、義務者に対して文書をもって納付を命じ(同法第5条)、義務者が当該費用を納付しない場合には、国税滞納処分の例(※下記)により費用徴収を行うこととなる(同法第6条)。

2 一方、法第14条第10項における略式代執行の場合、「行政代執行法の定めるところに従い」とは規定されておらず、「その者の負担において」との文言があるのみである。

これは、法第14条第3項の命令に係る措置は、本来、同条第3項の命令を受けるべき当該「特定空き家等」の所有者等の負担で行い、当該所有者等から徴収すべきことを明示しており、例えば同条第10項に基づく略式代執行の執行後に命令の相手方(すなわち「特定空き家等」の所有者等)が確知できた場合等において、略式代執行に係る費用を回収するための根拠を規定したものである。

  なお、略式代執行に係る費用を徴収するための手続きについては、行政代執行法第6条を準用する明文の規定がなく、またそれ以外に行政上の強制徴収ができる根拠規定がない(債権の自力執行が不可能)以上、市町村は略式代執行の対象となった「特定空き家等」の所有者等が費用支払いを行わない場合、民事訴訟を提起し、裁判所による給付判決を債務名義として民事執行法に基づく強制執行(司法的執行)に訴えることとなる(地方自治法施行令第171条の2第3号参照)。

〇行政代執行法

(費用の徴収)

第5条 代執行に要した費用の徴収については、実際に要した費用の額及びその納期日を定め、義務者に対し、文章をもってその納付を命じなければならない。

第6条 代執行に要した費用は、国税滞納処分の例により、これを徴収することができる。

2 代執行に要した費用については、行政庁は、国税及び地方税に次ぐ順位の先取特権を有する

3 代執行に要した費用を徴収したときは、その徴収金は、事務費の所属に従い、国庫又は地方公共団体の経済収入となる。

※納税の告知(国税通則法第36条第1項)→督促(同法第37条第1項)→財産の差押え(国税徴収法第47条以下)→差押財産の公売等による換価(同法第89条以下、第94条以下)→換価代金の配当(同法第128条以下)

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